超言理論

特に益もない日記である

学会を楽しむ余裕が必要だ

言語処理学会2024に参加してきた.




2024/03/17
自分の持っているPublication Listに大いなる誤りがあることが @mhangyo さんによって明らかになった.
言語処理学会への参加が10年ぶり2度目と書いたのだが,実際には2017年に言語処理学会に参加し,"エントレインメント分析に基づく応答文選択モデルの評価"という発表していた*1
ということで,改めて,7年ぶり3回目です.よろしくお願いいたします.



自分にとって最初にして前回となる言語処理学会の参加が10年前の2014年,北海道大学で行われた回であった.
2014年の言語処理学会の時も,参加記録を残そうと思って下書きまでは用意したものの,書いて公開する気力が全く起きず,そのまま10年間塩漬けになっているのをこの記事を書くにあたって見つけている.後悔はしている,反省はしていない.

2014年の言語処理学会は前後に色々とイベントがあり,非常に楽しく充実した10日間ほどになったというのをよく覚えている.
その頃はまだ修士の学生で,対話そのものというよりは自然言語処理的な取り組みが大きかったように思える.実際にその回の発表は"日本語言い換えデータベースの構築と言語的個人性変換への応用"で,PPDB:Japanese - 日本語言い換えデータベースというのを作っていた.


奇しくも,2014年から10年経った2024年の言語処理学会では,愛媛大の近藤さん,梶原先生とお会いして,その際に「PPDB:Japaneseと同様のやり方で,JparaCrawlを活用したより大規模なPPDBの"EhiMerPPDB"を作成したんですよ」と教えてくれた.
github.com
自分の作ったPPDB:JapaneseもEdinburghやJohns Hopkins, Pennsylvaniaでやられていた言い換えの亜種というか日本語ローカライズというか,同様のやり方で日本語の言い換えデータベースを作ったという話なので,脈々と(?)言い換えデータベースという言語資源をつくり,広げ,良くしていく取り組みが続けられているのはとても良い営みなのではないかと思う*2*3



さて,自分にとっての今年の言語処理学会は本会議とWSでそれぞれ1件づつ主著の発表があった.

本会議では質問応答のセッションで"絵本を題材とするクイズの生成と評価"という発表を行った.
www.anlp.jp
昨年の言語処理学会ではクイズに関する研究が複数あり,今年もAI王などのクイズに関する取り組みがあったため,多数の,セッション1つくらいの発表があるかなと思ったが,予想に反してクイズに関する発表を集めたセッションはなく,質問応答や言語生成などのセッションに散らばっていた*4

WSは日本語言語資源の構築と利用性の向上に参加し,"対話の楽しさの評価に向けた日本語応答生成ベンチマークの構築"という発表を行った.
jedworkshop.github.io
本会議とは違い,WSではプレゼンタイマーが発表者画面に映し出されないなどの違いに発表に入るまで気づかず,時間管理が杜撰になってしまい大変反省すべき点が多かった.
また,WSの主題として「言語資源の構築,利用をいかに進めるか」という資源自体というよりは資源を増やす,広めるための仕組みづくりについての議論が大きかったところに「貴重な資源をつくりました」というスタンスで突入してしまったのがもう一つの反省点である.
WSからの帰り道はメンタルサゲサゲであった.失敗したと思うとかなりヘコむところは10年前からほとんど変わっていない.そういえば,10年前もNLPの発表後に「〇〇を失敗したので,大変ヘコんでいます」とGraham先生に言ったら「えっ,君,そんなちょっとした事でヘコんだりするの」と驚き混じりに言われたことを思い出す.見た目や挙動に対してメンタルが弱いのである.



言語処理学会全体を振り返ってみると,質疑は非常に有益であったし,大学院時代のいろいろな人たちに会えたりして,学会自体は非常に楽しかった.
学会側のサポートも非常に充実しており,Slackを活用した質疑や交流,コーヒーブレークコーナーの充実度合いなどは他の学会のレベルから頭ひとつ抜けていると思う.
しかし,自分の参加形態の問題で,楽しめなかった部分も多かったなというのも感じた.これは学会の問題というわけではなく,自分が学会参加をした際の「学会を楽しむ心」というのが「現地」「泊まり」「期間中は(学会以外の)仕事をブロック」という3種の神器的な要素に守られていたというところが大きいことを確認しただけの話である.
今回は発表日の朝に子供を保育園に送っていき,そのまま現地に出張,発表を含めてしばらく会場に滞在し,夕食前には会場を出て帰宅するという旅程で学会に参加していた.そのため,公式の懇親会はおろか,昼食も夕食も誰とも食べずに電車の中でパンを齧る日々である.やはり,学会の真の本番たる懇親会に参加できないと,学会の楽しさというか,真髄味わった度合いは急激に下がるように感じる.
snowman-88888.hatenablog.com

特に,自分の発表,参加したセッションの後はそのセッションで近い発表をしていた人や,興味のある人に声をかけて突発懇親会的なことが行われたりする.私もクイズに関する研究をやっている人や,学会でよく会う研究者と懇親したい気持ちはあったが,時間が許さず残念ながら今年は発表,質疑,コーヒーブレークでしか人と話す機会が少なく,ちょっと時間不足だったなと思う.
つまるところ,新しい風を感じるような出来事が例年に比べて少なかった,というような感じだろうか.


また,学会という雰囲気を楽しむためには,一種の研究ハイ的な「私生活は忘れて研究のことだけ考えてもOK」という気持ちになれなければならない気がする*5
往路でハイになれなかった自分の切り替えの悪さも敗因の一つだろう.


今回は時期的に出張できなかったので,これらの諸々の問題はどうしようもない.また,このように感じるのは自分の問題であって学会にも私生活にもなんの悪いこともない.
ただ,自分自身に学会を楽しむ余裕が必要だということが再確認されただけの話だ.来年はどのような参加形態になったともしても,学会を最大限楽しむことができるようにしよう,というのが次の目標となるのであった.

*1:卒業年度だったので忙しくてリストの更新から落としてしまったのかも.でもGoogle Scholarにも出てきていないので...?

*2:なお,自分は言い換えデータベースの更新をしていないので,このような営みが続いているのは梶原先生の大いなる貢献であると言わざるを得ない

*3:梶原先生といえば,今年参加したYANSも委員長,2024年は顧問とこちらも大活躍で,大変お世話になっている

*4:研究の主題とする部分(クイズはあくまで題材であって,主題は"言語生成結果の多様さの向上である"とか)の関係や,交流機会の創出のためにわざと複数のセッションに散らしている可能性もあるので,一概にどうこう言えるわけではないことには注意しなければならない

*5:もちろん,学会運営やそのほか業務もこなしながら学会をエンジョイしているスーパープレイヤーも多々いると思うが,私はそれではない


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