会社のPCのファイルを整理していたら,昨年の育児休職取得に向けセミナーで,育児休職を取得した男性社員としてディスカッションで登壇した時の資料が見つかった.*1 フォーマットは独自のようで,そのまま資料をアップロードするのは憚られたが,書いている内容は比較的よくあるものだったので,多少の修正と体裁を整え直して公開してしまおうと思う.
ただ,他の人の育児の役に立つ内容かと言われると,多分そんなことはないので,こういう育休を取った奴もいた,くらいの情報と思ってもらえれば良い.
状況
家族構成
自分・妻・子(現2歳)・猫
住居
- 結婚前:職場から徒歩5分のアパート
- 結婚後:自分と妻の職場の中間あたりにある借家
- 出産後:子供の保育園入園(失敗)を機に妻の実家に近いアパートに引っ越し
育児休職を取得した理由
- 子育てや家事により多くの時間を取るため
- (育休取る前にやっていたテーマの)研究が行き詰まってて正直やりたくなくなってたから
育児休職の取得期間と理由
休職の取得期間は2021年11月から2022年4月末までの約半年.
出産直後から休職しなかった理由としては,自分が主導する実証実験が9月開始であったことと,11月に会社の重要な面談があった(あるかもと言われた)ため.
育休取得から職場復帰までのスケジュール
時期 | やったこと | 備考 |
---|---|---|
2017年 4月 | 入社 | |
2019年 8月 | 入籍 | しばらく遠距離 |
2020年 12月 | 新型コロナウィルスが流行 | |
2021年 4月 | 上司に出産予定・育休取得を相談 | |
2021年 6月 | 周囲に休職を報告 | 同じ職場にほぼ同時期に出産する家庭が複数あったのでタイミングを合わせて報告 |
2021年 8月 | 出産 | 会社がリモートワークメインの勤務形態に移行 |
2021年 8~11月 | 年休と休暇を使いつつ,フルリモートで仕事+育休取得手続き | |
2021年 11月 | 育休取得開始 | |
2022年 4月 | 職場復帰 | |
2022年 5月 | 保育園入園 |
月齢ごとの生活
■出産直後
スケジュール
時刻 | 自分がやること | 妻がやること | 備考 |
---|---|---|---|
6:00 | 子供の起床に合わせて日光浴 | 同左 | 目覚ましはかけずに電気だけ自動点灯するようにした |
7:00 | 大人用の朝食準備 | ||
9:00 | 勤務開始 | 仕事はリビングでやる.子供が泣いたら可能な限り対応. | |
12:00 | 大人用の昼食準備 | ||
14:00 | ときどき子供と散歩・日光浴に行く | ||
16:00 | 子供の沐浴 | 同左 | 沐浴は日ごとに交代でやった |
17:00 | 子供の面倒を見る | お風呂ほか | |
18:00 | 大人用の夕食準備 | 子供の寝かしつけ | |
22:00 | 勤務終了 | 就寝 | 仕事は別室で |
23:00 | 風呂,家事の残り,猫の世話 | 妻と子供は猫と接触不可なので分離飼育 | |
24:00 | 余力があれば勉強や趣味をして就寝 |
やること
- 自分:家事全般,仕事
- 妻:子の面倒
子供は基本的に寝ている.でも寝ていてもベッドにおけるわけではないので,妻が抱っこしたり添い寝したり… 我が家の子供は比較的寝ている時間が多く,妻も子供を長時間抱っこしながら海外ドラマを見たりとかしていてもそれほど苦にならないタイプらしく,新生児の面倒はそれほど大変ではなかったね,と二人で話していた. (私は自分の手を動かさずにじっとしているのが苦手なので抱っこしてじっとしているのは結構大変だと思う)
自分は仕事をしながらだったが,妻に代わっておむつ替えとか粉ミルクあげるとか. もともと家事(料理がメイン)は自分の担当だったので,そのまま家事全般を担当. 妻が子供と寝ている横で,食事掃除洗濯買い物して残りの時間を仕事に充てる感じだった. 子育てめちゃくちゃしているという感じではないんだけど,妻からすると「困ったら呼べばすぐ来るからまぁよし」みたいな感じだったらしい(?).
■1歳前後
スケジュール
時刻 | 自分がやること | 妻がやること | 備考 |
---|---|---|---|
6:00~7:00 | 子供と一緒に起床 | 目覚ましはかけず,起きる時間はまちまち | |
7:00 | 子供の朝食準備 | 子供からあまりに手が離せずご飯作れないような時は妻が起きてきて手伝ってくれる | |
7:30 | 子供の朝食 | ||
8:00 | 保育園登園 | 起床 | 徒歩+電車で登園 |
9:00 | 勤務開始 | 勤務開始 | |
12:00 | 大人用の昼食準備 | ||
17:00 | 風呂掃除・子供の夕食準備 | 保育園お迎え | |
18:00 | 子供とお風呂 | 同左 | お風呂とご飯は大体交代 |
18:30 | 子供のご飯 | 同左 | 空いてる方はお風呂入る |
19:00 | 大人の夕食準備 | 寝かしつけ | |
20:00 | 大人の夕食 | 同左 | |
22:00 | 勤務終了 | 同左 | 仕事の忙しさと相談しながら |
23:00 | 風呂,家事の残り,猫の世話 | 就寝 | |
24:00 | 余力があれば勉強や趣味をして就寝 |
やること
- 自分:家事全般,子供の離乳食,朝起きてから保育園行くまでの面倒を見る
- 妻:保育園から帰って翌朝起きるまでの面倒を見る
動き回る,遊んで欲しいなど,子供主体の要求や,食事やおむつ替えを嫌がるなどの拒否動作も増え,新生児に比べて面倒を見るのが大変になった. 加えて,離乳食が始まって以降は,大人と子供で別々に調理が必要になり食事作りの大変さが段違いになった.
スケジュール通りに回っている分にはなんの問題もないのだが,体調を崩したりイヤイヤ言い始めると急激に大変になる. 保育園にも通い始め,他の子どもと接触する機会も増えたためか,風邪や病気などになる回数は新生児期に比べて急激に増えた. ひどい時は1ヶ月のうち1~2日しか保育園に行けないほど体調不良が続くこと(1日登園したら熱が出て1〜2週間くらい療養して,1日登園したらまた熱が出て1~2週間療養というペース)もあった. 夫婦共に有給をほぼ使い果たし,かなりカツカツだった. (新型コロナウィルスの流行もあり,熱が出た場合の療養期間を従来より長く取っていたり,病児保育の利用を推奨しない雰囲気になっていたりしたのにも原因があると思う)
保育園に行っているということは,(保育園に通えるかどうかを決める条件の一つに就労中というのがあるので)ほとんどの場合で休職期間中ではない. しかし,保育園行き始めの子供は保育園に行きたがらない,体調が崩れやすい,精神的にも肉体的にも不安定になりがち,年齢によっては夜泣きがあったりイヤイヤ期があったりととにかく大変で,さらに重ね合わせるように職場復帰で仕事が色々あったりすると「早く仕事始めなきゃなんだけど子供が保育園に行かない」「大事な仕事があるのに急に子供が熱を出して」「締め切り前に病気をもらってくる」などなど本当に大変になる. 育休終了後,保育園行き始めてから1年間くらいが一番大変だったと思う. ぶっちゃけ,下手に復職してしまうと仕事はあるは育児はあるわ,仕事できなきゃ評価下がるわなどと悪いことばかり起きるので,保育園行き始めて半年から一年くらいはそのまま育休取らせてほしいとすら思う.
保育園に行く前までは休職中なので,子供と1日中べったりで遊んだり,外気浴ついでにピクニックをしたりなど,いろいろなことができる. まだそれほど大きく動かない,走ってどこかに行ったりしないので,大きな公園にレジャーシート引いて木陰で家族全員でちょっと横になって・・・みたいなこともできて結構楽しい.
育児がある程度落ち着いてきたら,交代で1日(半日)お休みみたいな日を作ったのもよかった. 自分は半日ほどロードバイクで家の近くをぐるっと回ってちょっと美味しいもの食べてきたり,妻の時は自分と子供で半日お出かけしてその間休んでもらうとかしていた.
■2歳前後
スケジュール
時刻 | 自分がやること | 妻がやること | 備考 |
---|---|---|---|
4:00~6:00 | 子供と一緒に起床 | 同左 | ママじゃないとイヤ期も始まり,家族全員で早朝に起きることになる. |
6:30 | 子供の朝食準備 | ||
7:00 | 子供の朝食 | 可能なら二度寝 | |
8:00 | 保育園登園 | 起床 | 徒歩+電車で登園 |
9:00 | 勤務開始 | 勤務開始 | |
12:00 | 大人用の昼食準備 | ||
17:00 | 風呂掃除・子供と大人の夕食準備 | 保育園お迎え | |
18:00 | 子供とお風呂 | ||
19:00 | 家族でご飯 | 同左 | |
20:00 | 子供の面倒を見る | お風呂など | |
21:00 | 寝かしつけ | ||
20:00 | 勤務終了 | 同左 | 仕事の忙しさと相談しながら |
23:00 | 風呂,家事の残り,猫の世話 | 就寝 | |
24:00 | 余力があれば勉強や趣味をして就寝 |
やること
- 自分:家事全般,子供の離乳食,朝起きてから保育園行くまでの面倒を見る
- 妻:保育園から帰って翌朝起きるまでの面倒を見る
とにかく動く,喋る,遊びたいし構ってほしい. 「パパ,いないねぇ・・・(悲しそう)」などと仕事部屋の前で言われた時には仕事を中断して出ていく他ない(激甘). 動く範囲は増えたが,年齢相応の理解や落ち着きも出てきて,面倒を見る大変さはむしろ減った感じもする(これは我が子が比較的落ち着いているというだけの話かもしれない).
保育園にも慣れたのか,イヤイヤは減り,病気や風邪をもらってくる頻度も減った. 調子が良ければ1〜2ヶ月くらい特に熱も出さずに保育園に行っている.
食事も離乳食が完全に終わり,2歳の幼児食は大人のご飯を取り分けて作れるくらいの内容になった. 一部のうどんやおにぎりくらいの食べ物は買ったまま店で出たままでも食べれるようになり,食事の手間は段違いに減っている. 卒乳した後は特に食欲が増進し,ご飯美味しいと言いながらいっぱい食べてくれるので,調理者としては料理の作り甲斐もあって楽しい.
今まさに,現在進行形で可愛い盛り更新中という感じがする.
家事・育児サポートで使ったもの
- 家電:ルンバ,温水洗浄できる食洗機(殺菌もできる),ベビーセンス(心拍停止アラート),Switchbot(エアコンや照明の自動制御),高機能なオーブンレンジ(離乳食調理に便利)
- 食材等の配達:生協の週1配達
- 病児保育:コロナで利用が難しかった
- ファミリーサポート:コロナで利用が難しかった
- ベビーシッター:コロナで利用が難しかった
- 家事代行:なし
- スマホアプリ:新生児〜1歳くらいまで「ぴよろぐ」でミルクや排泄の記録,今は予防接種のみ記録.Googleカレンダーに「子供の記念日カレンダー」を作り,初めてできたことなどを記録.「Googleフォト」「iCloud写真」で祖父母と写真共有.
- そのほか:助産師訪問サービス(地域の施策によるかも)
コミュニケーション
会社での工夫
- 取得前:とにかく自分の作業をオープンにする,作業記録や説明書を残す.
- 取得中:メールなどは見なかったので不明,外部の人から連絡取りやすいように私用のメールアドレスなどを公開したり転送設定しておく(研究者特有かも).
- 復職後:子供の写真を見せる,直属上司などには家庭の状況を意識的に共有するようにする(状況に応じて配慮してもらえたりするので).
夫婦で話し合ったこと
- お金,教育方針(特にどのような地域で子どもを園・学校に通わせたいか),健康(乳幼児向け新型コロナワクチンが出たら接種するか,家族に感染者が出たらどうするか),家族・親戚関係(帰省したいかなど).
- 家族や親戚との関係・状況が夫婦でかなり違ったので,よく話し合った.
コミュニケーションの工夫
「普通は」「常識的に」のような表現を使うのをやめた.
そもそも生きてきた環境が違うので,それぞれの思う普通は違う. 「普通はこうする」のように大多数がこうしているからそれに倣うべき,という言い方をすると,根拠や納得なく,相手の意見を圧殺して押し通すことになってしまう. 「普通はこうする」ではなく「私はこうしたい」と言うようにして,「誰が」「なんで」「何を」やりたいのかはっきりさせ,話し合う機会をできるだけ多くした.
「思ったことはその場で言う」と「あとに引きずらない」ことを心がけた.
その場の勢いや感情に任せて捲し立てるのは良くないが,(育児中は忙しいので)その場で言わないと忘れてしまうことが多々ある. 何がイヤだったのか忘れてしまうと,原因が解決できないままイヤな気持ちだけが残るので,できるだけその場でこれはやめてほしいとか,こうして欲しいと具体的な要望を言うようにした. そして,言わなかったことは後から問題にしない(言わなかった人が悪い)ことにした.
具体的な要望や改善方法が出てくるので「もうちょっとなんとかならないの?」みたいな漠然とした不満が出にくくなったし,後からネチネチ言い合いにならなくて済むので良かったと思う.
育児の工夫
- 妻が子供の面倒を見ている時でも,子供に話しかけたりあやしたり,妻の話し相手になったりする(TVとか見れればいいが,子供が起きているとTVとかは見られず暇らしい).
- 育児中(子供が起きている時)は育児に集中する(パソコン・TV・スマホを持たない,見ない).
- 写真や記念日を記録,家族全体で子供の情報や関心を共有・維持する.
育休を終えて
休職して良かったこと
今は結構慣れてきたが,子供の面倒を見ながら仕事をするのは結構難しかったので,休職はやって正解だったと思う.
休職期間中に保育園をどうするか,お金や家はどうするかなどを相談する時間がとれたのも良かったことの一つとして大きい. 多分,仕事をした後に話し合おうといっても疲れていてそれどころではない.
新生児は結構寝てるので仕事をする時間があるように感じるが,実際は抱っこしていないと寝ない・ベッドに置けないみたいな状況が多くて,ながら仕事をするのは難しい. 我が家は新生児の時はほとんどを妻が子供の面倒見てくれていたのと,家事を自分が担当という感じだったので,リモートワーク&裁量労働(つまり,仕事する時間をある程度自由に決められる)を活かして家事以外の時間で仕事ができたが,子供見ながら仕事をするのは大変だと思う. 1歳児,2歳児は子供にもよるが,保育園入園からの復職のタイミングがかなり厳しい. むしろここに育休が欲しい.
最後に,これはイレギュラーなことだが,4月頭で予定していた保育園に入れなかった時は本当に育休とっていてよかったと思った. 保育園に入れたい,と思う月齢だとハイハイからつかまり歩きくらいするくらいの状況が多いと思うが,そういう状況だと寝かせっぱなしにしておくわけにも,部屋に放しっぱなしにしておくわけにもいかないので,見ながら仕事をする・・・というのは難しいと思う. (できるかもしれないが,子供のかまってアピールを無視するのは心理的にかなり厳しい.乳幼児期に獲得した信頼が後々まで影響するみたいな話も聞くので・・・)
休職して悪かったこと
お金の問題が最も大きいのではないか. 育児の大変さは資金力と反比例する部分がある.保育園,ベビーシッター,家事代行サービスや,もっと先の話になれば学童保育や習い事など・・・お金があれば使えた,行かせたが,ちょっと予算が心許ないので・・・と言うことは多々あるなと思った.
休職中に給与は出ないが,休職期間に応じて育児休業給付金という元の給与の7~5割程度のお金が支給される. ぶっちゃけ(結婚して,子供が生まれて)家族が増えていくのに,子供が生まれて育てようと思うと給与がなくなり給付金が5割7割(つまり夫婦2人でやっと独身1人の時の給与と同程度,となることもある)となる,結構厳しい. 一生この金額で暮らすわけではないので,今だけ頑張って家計を回せばOKなのだが,先に書いた通り育児の大変さは資金力と反比例する部分があるので,願いが叶うならば子供が生まれた後こそもっとお金が欲しいのである.
休職中にやって良かったこと
- 離乳食を作る:大人の料理と違って味付けなしから始まり,出汁味,薄味,普通の濃さの味と段階的に変わっていく.母親でも第一子で初めて離乳食を作ることが多いので慣れとかないし,料理経験の有無もそれほど影響しない.ここで父親も離乳食を作れるようになる(最終的に幼児食,普通の料理を作れるようになる)と良いと思う.
- ワンオペ育児ができるようになる:どのような手段を使ってでも良いので,ワンオペで子供の面倒が見られることを確かめると良い.「最悪でも親のどっちか一人いれば子供の面倒見れるし大丈夫」という状況はかなり心強い.急な出張とかでもそうだし,一人づつ休日を取る時とかも.
- 育児の記録を残す:育休を取る人(特に男性)はまだ比較的少ない.復職すると「復職者セミナー」とか「育休取得者セミナー」とかに呼ばれることがある.そういう時に,育児の記録が残っていると思い返したり資料を作ったりするのに大変便利.
育休を取った感想
ここから先は個人的な感想である. 家庭の環境や各人の境遇によって思うことは変わるだろうし,考え方も人それぞれ違う. あくまで育休を取った一人の男の独り言くらいに考えて読んで欲しい.
親は親がやるべきことだけ親がやればいい.
色々な子育ての大変なことは,祖父母を頼る,家事育児サービスを頼るなどの方法で外注することができる. ほとんどの場合でお金はかかるが,本当に親がやるべきこと以外は別に外注してしまってもいいのではないかと思う.
個人的に,親がやるべき重要なことは「子供のことを好きになる」「子供に愛情を持って接する」こと(もちろん意見が違う人もいる)だと思う. (愛情の表れとして美味しいご飯を作りたいとかはおいておいて)ご飯を作るとかは全然重要なことではなく,ご飯を作ることで疲弊して子供に当たったりイライラしたりするくらいなら,家事代行などを頼んで離乳食や自分の食事を作ってもらったほうがいいと思う. なんなら全部インスタント離乳食でも全く問題がない. インスタント離乳食は普通に美味しいし栄養価もアレルギー配慮もされていて安全である. 自分の食事は困ったらウーバーイーツでおいしいもの頼めばいいと思う.
同じようなことが仕事でも言えると思っていて,仕事で疲弊して子供に当たったりパートナーに当たったりイライラしたりするくらいなら,いっそ育休をとって余裕を持って子育てしたほうがいいと思う. 仕事に疲れて子供やパートナーにあたってしまう,家に居場所がない,嫌われている,今更どう優しくしたらいいのかわからない,嫌われているので自分も相手を好きになれない,余計にイライラする. そして,最後は家にいたくないのでよりたくさん仕事を入れるようになる. 子供が生まれてしばらくの期間を無理に働いたせいで,子供やパートナーへの愛情,家での居場所などをなくすくらいなら,いっそ仕事なんて休んだほうが自分にとっては良いと思った.
仕事と天秤にかけるのは外注.
前の話と地続きだが,もし子供が生まれても仕事をするなら,諦めるべきこと(親がやらないこと)の第一候補は家事だと思う. 仕事で疲弊した分,本当に必要なこと(子供と接すること)以外はできるだけ外注してしまって,子供にかける時間をとってあげるのが良いのではないかと思った.
「仕事しているから子育てできない」ではなく,「仕事しているから子育て以外のことはできない(なので外注する)」という天秤の掛け方になるのかなと思う. 家事は金で解決してバリバリ仕事をするか,それとも,家事も親が解決して仕事はある意味余った時間でやる(もしくはやらない)か,どちらかなのかなと思う.
自分は仕事が忙しくなると結構イライラしがちになるが,そういうときに「結婚していなければもっと仕事ができるのに」「子供がいなければもっと仕事ができるのに」と考えるのは非常に不幸だと思った. そう言う時は,中華料理でも頼んで,ノンアルビールで妻と乾杯しながら,調理に使うはずだった時間を仕事に当てれば良いのではないか.
平等の問題(?)
我が家は「兼業主夫」の家庭で,基本的に家事は全部夫がやる. 洗濯物とかゴミ捨てとかはしばしば妻が手伝ってくれるが,キッチンは基本的に触られたくないので「何もしなくていい」で通している. 我が家はこの形が最良だと思うし,兼業主夫をしていることになんの後悔もない.
しかし,こういう家の話をすると,人によっては「そう言うのは奥さんがやるんじゃないの」「君(夫)のやるべきことは仕事ではないんですか」「そんなので将来は家族を養えるのか」「仕事の時間が少なくなるんじゃないですか」と言う人間は一定数存在する. それに対しては別に怒りを感じるとかそういうのはない(どうでもいい)けど,「女性の社会進出」みたいな話はよく聞く一方で,「兼業主夫」「専業主夫」みたいな「男性の家事」に対する印象みたいなのって,あんまり変わってないんじゃないかなと思った. 個人的には別にどっちがどっちをやってもいいと思うんだけど.
あとは,スパダリ?のような仕事100点+家事100点の200点満点男性みたいな概念を求める,賞賛する声が大きくなった気がするが,普通の人間は(男女問わず)リソース100点だと仕事50点+家事50点とかになると思うし,なんなら仕事と家事の切り替えコストとか自分の趣味とかにもリソース使うから仕事30点+家事30点+趣味(息抜き)20点とかになれば上出来だと思う. 自分は「スパダリになれ」と言われたわけではないが,普通の兼業主夫でもかなり大変な思いをしているので,スパダリを理想とするのはかなり難しいんだろうなと思った.
育児・復職セミナーの掲げる理想像について.
育児や復職者向けのセミナーに参加する機会が増えた. こういうセミナーに参加すると,大体が「2児の母,出産後に周囲の理解と会社の支援を得つつ海外大学でMBA,帰国後・復職後バリバリ仕事をして今は部長・室長」みたいな人が「大成功例!!!」という感じで出てきて「育児!家事!仕事!両立できます!!」みたいな話をしてくれる. でも,今本当に出産後に会社の支援のもとで海外大学でMBA取るのにお金出してくれます?そもそも,そのポジション取れる人を目指さないと育児休職とか取っちゃダメですか?ってなるので結構げんなりすることがある. なんかこう,自分の境遇に近い人でも「なんとかやれてる」んだなって思えないと「育児休職しよ」ってならないんじゃないかなと思った.
セミナーで話したこと
男性は育児や子供への愛情においてはハンデスタートの側面があると思う. 女性は妊娠から出産までのおよそ10ヶ月を子供と一身同体で過ごす. 一方で,この10ヶ月間は,男性は女性に比べると子供への距離が遠くなりがちになる. 出社して働いている人などは「妊娠中にコロナ持って帰ってくるなよ」などと言われ始めると尚更にふれあいが遠い. 「単純接触効果」などで説明していいのかはわからないが,やはり生まれた瞬間から10ヶ月の間,子供と一身同体だった母親と,それを側から見ていた父親では接触の強度も回数も段違いではないか. 母親と同じくらいの愛着,愛情を持って子供と接することができるようになるには,父親は意図的に子供と接触する回数を増やす必要があると思う.
今はかなり改善されたと思うが,少なくとも自分の時は新型コロナウィルスの関係で,出産前の入院から家族であっても面会謝絶,出産立ち会いも不可,産後の母親,子供への面会も不可と言われた. 面会は最悪我慢するが,大きな問題は「父親が出産前後の助産師や看護師による育児レクチャーなどを受ける機会がなかった.」という点である. 子育ての初期知識を入手する機会がなかったために,子育て知識ゼロでいきなりぶっつけ本番の子育てを開始すると,パートナーから「任せるのが怖い」「やらせても不十分でイラつく」「自分でやったほうが早い・いい」と言われかねないなと思った*2. なので,事前に育児本などで勉強しておき,子育てに参加する機会はできるだけ増やした.
子育てはしないと子育てがうまくならない. 子育てをうまくならないと子供を任せてもらえないので子育てをやる機会が減る. 子育てが習熟できないので分担や交代ができない,子育てをやる機会が減るのでさらに子育てが上手くなる機会が減る.下手なまま妻だけが子育てできるようになり,結局,夫は子育てをやらなくなる. このような負のループが起きてしまうと,子育てに全く関われなくなる.その上,今後一生「子育てしなかったくせに」と言われ,悲しい. そんなことが起きないように,妻と一緒に夫も子育て1年生で始めることが重要だと思う.そう,最初が肝心.
仕事と家事・育児のバランス
自分の中では「家事も育児も頑張りながら仕事している!」と思っていたが,よくよく周りを見ると同じくらいの子供を持ちながら自分以上に仕事をしている人は結構いる. おそらく,他の家庭よりも「家事に時間を割いている」というのはそうなんだが,もっと家事を省いたり,効率的にやっていかないとダメかなと最近思い始めた.
というのも,家事は外部から見えないので,同じように子供がいる社員で,業績がいい社員と業績が悪い社員がいたら当然前者を優遇する. いくら家事を頑張っても会社で給料が上がるわけではないので,それなら家事よりも仕事の比率をあげるべきではないか,というような話になる. 何をどのくらいしたいかというのは人によって異なるし,現状もらっている給与にもよるので仕事,家事,育児の割合をゼロイチで語ることはできないのは当然のことだが,だからこそその配分は都度しっかり見直していきましょうね,という話も必要な気がした.