超言理論

特に益もない日記である

そうだプレゼンを作ろう

めっきり寒くなってきましたが、寒くなった以上にホットになっているのが、そう、中間発表です。学部と博士前期を別の学校に行った人はM2で初めて「研究における後輩」ができるわけですが、後輩を指導するというのは本当に難しいですね。こうなるのなら博士前期1年で学部4年生の後輩が居ればよかったと思います。*1

で、いろいろとプレゼンテーションなどを見る機会があったので、思ったことを少し書いておこうと思います。

スライドの作り方

用意するもの

  • メモ帳
  • 三色ボールペン
  • 「やる気」と「アホになる勇気」

パソコンは最後まで使いません。

スライドを作る手順

  1. メモ帳にスライドを書く(ちゃんと内容まで書き込む。○○のことを書く、など省略しない。)
  2. 一晩頭を冷やしてから、メモ帳スライドでプレゼン
  3. メモ帳を全て切り取り、順序が本当に正しいか並び替えて確かめる(必要であればスライドを足したり、削ったりします。ただし、スライドを修正して上から足すのはNG)
  4. スライドの枚数が発表時間(分)の8~6割(つまり、10分発表なら8~6枚)で、おさまりの良い内容に調整
  5. パソコンでプレゼンテーションに起こす

注意したいのは、ここでメモ帳に書き込むのは三色ボールペンのみ使うこと。メモ帳に書き込んだ字は読めるようにすること。
これはなぜかというと、最初からパソコンで文章を書きながらスライドを作ると、適当に文字サイズをコントロールして詰められるだけ詰めてしまい、読みにくく、分量が多く、文字が小さくなってしまうからです。
メモ帳(小さめの紙)に手書きで書いてダルくない量、文字サイズくらいがスライドとしてはちょうどいいと思います。PCでスライドを起こすときは文字サイズを22~30ptくらいにしましょう。
三色ボールペンを使う理由は、スライドをあまりカラフルにしてしまうと強調したいところが分からなくなるからです。配色は、基本の文字色:黒、ポジティブな強調文字色:赤、ネガティブな強調文字色:青の三色くらいが分かりやすいと思います。あと、色を使う頻度ですが、強調色:赤や青はスライド1ページにそれぞれ1~2箇所くらいが限度だと思って作ります。

スライドを作るときに心掛けること・コツ

何も知らない人の気持ちになる

多くの聴衆はあなたの研究について、またはあなたの研究している分野全体について知識が(または興味が)なく、全くの素人です。学会に行けば多少は違いますが、学会でわかる人に分かってもらえばいい、というのは要するに井戸の中でウシガエルごっこがしたいみたいなものです。学振や報道発表用の資料なども「何も知らない人が分かる」ようにしなければならないので、最初からそのつもりで作る方が良いと思います。

プレゼンは自慢をする場ではなく、理解・納得など共感を求める場

自分のやったことをべらべらと喋って、最後にどうだ凄いだろう(ドヤ)とやるのは大間違いで、聴衆がいかに理解するかが最重要ポイントです。

時間オーバーはゲームオーバー

発表時間を守らなかった時点で、それはプレゼンではありません。きっと聴衆は「長いなー、早く終わらないかなー、不愉快だなー」と思っています。
さらに言えば、スライドは初めと終わりに重要な情報が詰まっています。極端に言えば、最初と最後があれば「何が問題で、発表者はそれを解決できたかどうか」が分かります。しかし、時間をオーバーするということは、最後の最重要スライドが削られるわけで、聴衆は「問題はわかった、今までのアプローチもやりたいこともわかった、で、結局できてないの?ダメダメじゃん?」と最悪の印象を与えることになります。

文章は簡潔にする

基本的に文章を書いてはいけない。重要な一文のみをピックアップし、できるだけ体言止めの形でスライドに入れる。
何とかメソッドのように、極端に言えば数単語だけババッと出すのでも構わない。

構成をしっかり決める

基礎ですが、重要です。まず、構成がしっかり決まっていればスライド枚数がダラダラと増えて発表時間が間延びしたりすることはありません。なので、スライドはしっかりと研究の筋を通した構成を心掛けます。
例えば、背景、目的(問題提起)、従来法、提案法、実験、結論
これは、現状の問題に対して従来法が効果的でない(または別の問題を孕んでいる)時に使います。提起した問題に対して、従来法ではこのような部分に対応できない、そのため新しい手法を提案する、と話を進めます。
目的と従来法の位置を逆転して背景、目的(問題提起)、従来法、提案法、実験、結論とすることもあります。こちらは、多くの場合は従来法の中でネックとなっている問題を解決し、従来法を改善した手法を提案するときに使います。
また、構成と伝えたいことを結び付けることも重要です。基本的に研究発表などのプレゼンは技術の需要、研究の目的、従来の問題点、提案の新規性、提案の有効性(有用性)またはデータ分析や資源作成の場合、データの有用性、分析によって得られた知見を明示する必要があります。

構成に沿って、スライド関係を整理する

スライドは一枚一枚に意味があります。構成に対して適当な内容が書かれている必要があり、スライドそれぞれが関係を持っている必要があります。
スライドが一枚一枚意味を持っているということは、同じタイトルのスライドが連続するということはまずありえません。また、同じ内容のスライド(または文章)が複数のスライドに存在することや、スライド内・スライド間に矛盾は当然生じ得ません。
特に研究を始めたばかりのころは、その分野に対する理解が薄くて従来法と提案法の明確な位置づけ、関係が分からないことがあります。先行研究の論文をわかるまで何度も読んで、自身の提案が何に有効で、何が問題なのかをきちんと明らかにすることが重要です。

スライドと論文の関係を整理する

基本的に、スライドは論文をわかりやすくしたものです。ということは、論文と違う内容や違う章立てになることはなく、それらは同じ関係を持ちます。
端的に言えば、スライドがあれば、発表用のカンペや原稿は不必要で、言うべきことが端的にスライドに書かれていて、それを読むだけでよいはずです。

文献やスライドの引用

文献を引用することは論文内で他の論文を引用することと同様に大変重要です。しかしながら、論文と違って自由な構成、表現が可能なスライドでは引用の範囲が分かりにくくなったり、内容が不明瞭になることがあります。文献の引用には必ず引用元を"[水上 ら, 2013]"や"[Mizukami et al., 2013]"のように明示し、それがスライド全体を指すのかある文章を指すのかわかるように心がけます。(文章なら文末に、スライド全体ならタイトルやスライド右上部に引用を明示します。)
また、他の発表からスライドを引用する場合は文献を引用する場合と異なり大変注意が必要です。他人の発表スライドからそのままコピーしてくると、必ず情報に齟齬が生じます。それぞれ発表者は自分の発表に最適なスライドを作っているため、同じ論文の内容を紹介していたり、同じ手法の説明をしていたりしても、重要視している部分が異なります。そのままコピーするのではなく、きちんと理解してスライドを自分用に再構成してください。ということで、スライドをそのまま引用するのは厳禁です。

スライドに書くこと

背景

研究や分野全体の背景を書く
どのような需要があり、何がメリットで何がデメリット(問題)なのかを簡単に、わかりやすく説明する。
分かりやすく説明するためには、身近なものを例にして説明するとよい。

目的

この研究における目的を書く
デメリット(問題)がどのような障害であり、解決することでどのような利益が得られるかを背景を踏襲して説明する。
また、解決できたかどうかを判断する方法をきちんと示す。

従来法の紹介

従来法の全てを紹介するのではなく、要点だけかいつまんで話す。特に、その手法ができること、メリット、デメリットを明確にして紹介する。
また、提案法との対比を明確にするために、従来法でできなくて提案法でできることがあればきちんと明示する。

提案法の紹介

従来法との比較、提案法ができること、メリット、デメリットを明示する。また、結果として明示する際は必ずその結果を導き出すためのデータを合わせて示す。

実験・評価など

実験や評価は提案法が目的を達成したことを示すための大切な証拠である。目的をきちんと考慮した実験設定、評価基準を用いてそれを提示する。
客観・主観を明確にし、何をどのような観点でどうやって評価したのかを明らかにする。
グラフを出す場合は軸にラベルを付け、単位も必ず付ける。軸も対数や割合などいろいろ試してもっとも見やすいものを選ぶ。
散布、折線、棒、レーダーなどいろいろな種類のグラフがあるが、最も分かりやすいグラフを選ぶこと。
生のデータは極力出さず、わかりやすく整理して提示する。

まとめ・結論

最重要スライドであることを念頭に置く。
まとめでは、スライド全体を振り返って取り組むべき問題の提示、提案法の説明、結果をそれぞれ分かりやすく書く。
提案法を試して、問題や改善点があればそれも明示し、どのように対応していくか述べる。
今後の予定は重要度・緊急性の高いものから優先的に紹介する。

最後に

長くなったが、一応自分用のメモのつもりで書いているのでとりあえずこのくらいにしておく。
もっとわかりやすくtipsを書きたいけど、わかりやすい文章を書こうと心掛けるのはやっぱり難しい。

*1:よく考えたら論文のチェックや研究のあらすじの指導なら博士前期1年の時に外部の大学の学部生を相手にやっていたことを思い出しました。


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